
ナーチャリングの目的は"育成"ではなく"発見" と"想起"
2025/06/19
皆さん「ナーチャリングとは」という質問を投げかけられたら、どのように回答しますか?
「ナーチャリング=顧客育成」と回答される方は少なくないでしょう。たしかに、Web検索をしても、AIに聞いても「顧客育成」という回答が一番最初に出てきます。
また、英語の意味でも「nurturing=育成する」なので間違えではありません。
ただ、弊社では「ナーチャリング=顧客育成」だとは考えておりません。弊社では、ナーチャリングの目的は「発見」と「想起」だと認識しております。
たしかに、育成できたら最高ですよね。自社の思ったように顧客が動いてくれたら商談も売上も伸ばすことができます。ただ、顧客はそこまで簡単に動かないですし、育成できません。
そのため、個人的な意見ですが「顧客を育成すること」は「幻想」だと考えております。
本記事では、BtoB領域におけるユーザー行動から、ナーチャリングの真の目的である「発見」と「想起」に焦点を当て、商談創出につながる実践的なナーチャリング戦略をご紹介します。実体験やデータをもとに、個人的な見解も多く含まれておりますが、今のナーチャリングに”疑問”や”違和感”を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
「ナーチャリング=顧客育成」ではない
先ほどお話ししたように、弊社では「ナーチャリング=顧客育成」ではないと考えております。というのも、顧客は簡単に育成できるものではないからです。
まずは、「ナーチャリング=顧客育成が幻想である」ということからお話ししていきます。
ナーチャリングという言葉に惑わされる
そもそも「ナーチャリング」という言葉に惑わされるケースは多いでしょう。
「ナーチャリング(Nurturing)」という言葉は英語で「育成・養育」を意味するため、多くのマーケターが「リードを時間をかけて育てる活動」と解釈しています。言葉の印象から、「継続的な情報提供によって見込み客の購買意欲を段階的に高めていく」というアプローチが主流となりました。
しかし、この「育成」という概念こそが、ナーチャリング活動の成果を阻害している最大の要因です。
実際のBtoB領域では、顧客は企業が想定するような段階的な成長プロセスを経て購買に至るわけではありません。むしろ、内部の課題や予算状況、組織変化などの要因によって、突発的に購買ニーズが顕在化することの方が多いのです。
顧客は育成できるほど簡単に動かせるわけではない
そもそも人は簡単に動かせるものではありません。簡単に動かせるのであれば、マーケティングでも営業でもマネジメントでも苦労しませんよね。
私も、過去にマネジメントを行っていましたが、目の前の人材ですら、育成をして行動させることに苦労した経験があります。
目の前の人間を育成し行動させることに苦労するのに、Web上で育成するなんて不可能なのでは?と思うわけです。
コピーライティングの世界でも3つのNOTとよく言われます。(有名なので知っている方も多いかもしれません。
読まない
信じない
行動しない
実は、顧客を育成したり動かすことが難しいことは昔から言われていたことなんです。ただ、ナーチャリングとなると途端に育成できると思ってしまうのは不思議ですよね、、、。
また、「育成する」というのは、上下の関係性になります。そのため、自然と顧客が下になってしまいます。これから商品やサービスを利用いただくクライアント様を下に見ることは、「おこがましい」のですよね。
育成するという認識を持っていると、自然と顧客を下に見てしまったり、顧客をコントロールできると思ってしまいます。
そのため、「ナーチャリング=顧客育成」という認識を持っていること自体がマーケティング活動において非常に悪影響となってしまいますし、ナーチャリングで成果を出せない大きな要因だといえます。
顧客育成を元にしたナーチャリングのよくある失敗
いままで「顧客育成=ナーチャリング」だと認識して失敗する施策を見てきました。その中でもあるあるなのは「ステップメール」です。
ステップメール自体が悪なのではなく、ステップメールで企業側が描いたシナリオ通りに進んでいけば商談すると思っていることが失敗の原因となります。
先ほども紹介したように、顧客は簡単に動かせるわけではありません。そのため、いくらステップメールで訴求をされても所詮メールなので、ユーザーは動かないのです。
ステップメールを実施すること自体は問題ないですが、ステップメールで顧客の態度変容を起こし商談を増やせるといった幻想は持たない方が懸命でしょう。
そもそもBtoB業界における購買行動とは
自分で"情報収集"をして自分で"意思決定をしたい"顧客が増えている
現代のBtoB購買者は、購買プロセスにおいて、営業担当者と57%の購買行動を終えていると言われております。

株式会社wibさんによると、直近では67%となっており、20代に関しては85.4%と多くの方が営業パーソンと接触する前に、意思決定の基となる情報収集を行っているのです。

そういった背景から情報収集段階の方が営業パーソンと接触しない可能性も高くなっているとも捉えることができます。(私もそうですが、いきなり営業されたくないですよね、、、)
さらに、BtoB領域ではリードタイムが長くなる傾向があります。情報収集も1ヶ月といった短期ではなく、数ヶ月〜1年といった方も少なくないでしょう。
そのため、顧客の情報収集の段階でいかに接触が図れるか、想起をしてもらい検討のタイミングで選んでもらえるかが重要になるのです。
購買行動は論理的だが、購買熱は一気に上がり一気に下がる
BtoBの購買決定は論理的な判断基準に基づいて行われます。というのも、組織や経営方針の変化、予算の時期など意思決定に至るまでさまざまなステークホルダーに影響を受けるからです。
また、先ほど紹介した57%ルールにおいて、57%の購買行動を一気に進めるケースもあります。他にも、56%くらいまでは長く情報収集してたけど、57%を超えてきたら一気に検討が進むケースもあるでしょう。
顧客の購買行動は、情報収集時間と検討度が綺麗に比例するわけではないのです。むしろ、上下に変動しますし、いきなり購買意欲が高まるケースは少なくありません。

つまり、BtoB市場では「継続的な育成によって徐々に購買意欲を高める」というアプローチよりも、「購買熱が高まったタイミングを的確に捉える」ことの方がはるかに重要なのです。
購買行動から見るBtoB領域における重要なこと
先ほど紹介したBtoB領域における購買行動から、商談数や受注数を増加させるためには下記の2つが重要になると考えております。
購買意欲が高まったタイミングを逃さずに捉えること
購買意欲が高まった際に想起されること
また、上記の2つを実現するために「ナーチャリング」は大いに活躍します。そのため、冒頭でも紹介したように、ナーチャリングの役割は「発見」と「想起」になるのです。
ナーチャリングの役割は「発見」と「想起」
では、具体的にナーチャリングにおける「発見」と「想起」を紹介していきましょう。「発見」と「想起」を具体的に言語化すると下記の2つになります。
今"欲しい"顧客を逃さないこと
欲しい時に"想起"してもらうこと
今"欲しい"顧客を逃さないこと
ナーチャリングの第一の役割は「発見」、つまり現在購買ニーズが高まっている顧客をいち早く特定することです。いわゆる「ホットリード(MQL)」を見つけることを指します。
先ほど紹介したように、顧客の購買意欲が高まりは一気に高まります。そのため、いかにそのタイミングを逃さないことが商談数を増加させるためには重要になるのです。
ハウスリストと継続的な接点を持ち続けるだけではなく、「どのコンテンツと接点を持ったら今欲しいというシグナルなのか」「そのシグナルをどうやって検知するか」が肝になってきます。(具体的な対策は後述します)
欲しい時に"想起"してもらうこと
ナーチャリングの第二の役割は「想起」、すなわち顧客が購買を検討する際に自社を真っ先に思い出してもらうことです。顧客の動きはコントロールできないので、検討時に帰ってきてもらうことが重要になってきます。
株式会社WACULさんのデータによると、「BtoBでも第一想起した商品を導入する確率は55.3%」「もともと認知していた商品に問い合わせる確率は48.0%」となり、想起されることがいかに商談や受注に影響を与えるかがわかりますよね。
そのため、顧客との接点を最大化し「〇〇といえばこの会社」という想起が重要になります。
ただ、ナーチャリングというと「ハウスリストへのアプローチ」だと思われがちです。たしかに、メルマガを活用して、記事コンテンツやホワイトペーパー、ウェビナーなどのコンテンツアプローチは有効です。本来想起させるためのナーチャリングはメルマガだけではありません。
たとえば、認知広告として活用されるタクシー広告やYouTub広告も考え方によっては「ナーチャリングコンテンツ」だともいえるでしょう。私もタクシーで何度も接点を持つことで想起されることがあります。(私もタクシー広告で何度も接点を持ち想起したサービスがあります)
そのため、想起させるためのナーチャリングは「接点の最大化」がポイントになるのです。ただし、多くの会社では一定予算が限られているので、低価格で始められるメルマガ施策からスタートすることがベターでしょう。
ナーチャリングから商談を創出させるには
ここまでで、ナーチャリングの役割は「発見」と「想起」であることを認識いただけたと思います。最後に、具体的にナーチャリングから商談を創出させるには何をすればいいのかを紹介していきます。
ホットリードの定義化とホットリードの検知
顧客の「今欲しい」を逃さないためには「ホットリードの定義化」と「ホットリードの検知」が重要になります。つまり、「今欲しい顧客を定義」して「いち早く察知するためのスキームを構築」することです。
ホットリードの定義に関しては、基本的に下記の情報を元に設計していきます。
顧客属性(どんな人なのか、どんな企業なのか)
行動指標(どのような行動をとっているか)
タイミング(今何をしているのか)
行動指標に関しては、主に下記が挙げられます。
どのようなコンテンツを見ているのか(ウェビナー、ホワイトペーパー、サービス資料、記事コンテンツ、Webサイトなど)
過去にCVしたことがあるのか
再度資料やWebサイトに訪問をしているか など
サービス特性や保有しているコンテンツによってもホットリードの定義が変わってくるので、顧客理解や自社アセットの整理からホットリードの定義をする必要があります。
また、ホットリードの検知をする際にMAツールのスコアリング機能を活用するケースも少なくありませんが、注意が必要です。スコアリング機能自体は、非常に優秀な機能ではありますが、使いこなすことが非常に難しいのです。
過去にスコアリング機能を活用して、ホットリードを検知してもホットリードではなかったという企業様を見てきました。
そのため、運用初期から複雑なスコアリング設定をするのではなく、コンテンツごとに階段設計を設けて、どのコンテンツに接しているのかによってホットリードを定義することがベターでしょう。
ただ、メルマガを開封しただけでホットリードと定義をする企業様もいらっしゃいますが、メルマガの開封はなんとなく興味があって開封しただけの方も少なくありません。
そのため、ユーザー体験が悪くなるようなホットリードの定義には注意をする必要があります。
また、MAツールではメルマガの開封やクリック、自社のWebサイト上の行動をトラッキングすることはできますが、資料上のユーザー行動はトラッキングできません。
そのため、一度資料をダウンロードし、再度検討する際にWebサイトではなく過去にダウンロードしたサービス資料を閲覧している再検討顧客を見逃してしまう可能性があります。
もし、資料上のユーザー行動までトラッキングして、ファーストパーティの顧客行動をより可視化していくのであれば、資料上のWeb接客ツールがおすすめです。Owl Dataでは、資料上のWeb接客ツール「APPOLINK」を提供しております。
MAツールと掛け合わせることで、よりリアルタイムで様々なユーザー行動をキャッチアップすることができます。
もし「資料ダウンロードから商談率が増えていかない」「資料ダウンロードした顧客の掘り起こしをしたい」というお悩みがある方は、ぜひ参考にしてみてください。⇒APPOLINKのサービス資料を見る
CEPを意識したコンテンツ戦略
想起させるためのナーチャリングでは、CEP(カテゴリーエントリーポイント)が重要です。つまり、顧客との接点を最大化し「〇〇といえばこの会社」といった想起をとるということです。
カテゴリーエントリーポイントを創出することで、検討のタイミングで自社サービスを想起し帰ってきてくれるのです。
ただし、カテゴリーエントリーポイントは、ただ単に発信の量を増やせばいいというわけではありません。
カテゴリーエントリーポイントを創出していくためには、まず「どのような想起をされるべきか」を定義していく必要があります。本記事では詳しくは説明しませんが、自社サービスが他社に勝てる市場やカテゴリーを定義していくのです。
または、新しいカテゴリーを作っていくといった戦い方もあります。例えば、Sales Markerさんはインテントセールスといった新しいカテゴリーを創出してシェアを獲得していきました。
自社が勝てるカテゴリーやどのように想起されるべきかを定義できたら、発信の軸を決めていきます。つまり、コンテンツ戦略になります。
各担当者が好き勝手情報を発信してしまうと、認知はされても「なんの会社なのか」を認識してもらうことができなくなる可能性が高いです。さらに、間違った認識をされてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、ナーチャリングで発信するコンテンツとCEPが紐づくように、「どのようなコンテンツを発信していくのか」といったコンテンツ戦略が重要になります。
まとめ
ナーチャリングの真の目的は「育成」ではなく「発見」と「想起」にあります。従来の「リードを時間をかけて育てる」というアプローチから脱却し、「今欲しい顧客を逃さず、将来欲しくなった時に想起してもらう」という新しい視点でナーチャリング戦略を再構築することが、商談数増加の鍵となり
ます。
Owl Dataでは、APPOLINKという資料上のWeb接客ツールをはじめ、コンテンツ制作代行や、リードナーチャリング戦略設計などBtoB企業向けにナーチャリングの支援を行っております。
もし、ナーチャリングでお困りごとのある方はぜひお気軽にご相談ください!
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